法定相続分の通りの相続を希望するなら遺言書は不要か?
2019/6/25のブログで「特定の兄弟姉妹を相続人とするためには遺言書は有効(というか必須)」ということを書きました。
一般的に遺言書は「法定相続分と異なる相続」を希望する際に活用され、そうでない場合には重要視されない傾向があります。
例えば、相続人が息子ただ一人の場合、「息子○○に全財産を相続させる」と遺言書を残しても、残さなくても、結果として一人息子は全財産を相続します。
その意味では遺言書はいらないとも言えます。
ただ、私は個人的に、このケースでも遺言者を残したほうが良いと考えています。
その理由は以下の通りです。
理由 その1・・・遺族に強いメッセージを残せる
亡父の葬儀を慌ただしく終えた息子さんは、次に不動産や預金の相続手続に着手します。遺言書がなくても淡々と処理は進められるでしょう。
しかし、そこに亡父からの遺言書が発見され「私の財産は一人息子○○に相続させる。しっかり受け継いで充実した人生を送って欲しい」と励まされたら、息子さんはより前向きに歩むことが出来るでしょう。
遺言書は、法律効果だけでなく遺族の精神的な支えになるものだと思います。
理由 その2・・・遺族の事務負担が軽減する
遺言書がない場合、息子さんは法務局や銀行に対し、「相続人は自分以外にいない」ことを証明しなければなりません。
具体的には、父親が生まれてから死亡するまでの戸籍を集める必要があります。
これは息子さんにとっても、またおそらくお父様にとっても、あまり気分の良い作業ではありませんし、転籍を繰り返していたりすると、非常に大変で時間がかかる仕事になります。
一方、「私の財産は息子○○に相続させる」という遺言書があれば、息子さんは「私が当の息子です」ということを証明すればよいので、戸籍集めは格段に簡単になります。
遺言書を作るには、時間と労力、そしてある程度の費用もかかるので、個人個人のご判断にはなりますが、以上の理由により、私は単純に思える相続にも、遺言書を作成したほうが良いと考えています。